ストーリー|シェアシマが生んだ「アップサイクル・フード」、その誕生秘話をひもとく
これまで繰り返しご紹介してきた、「長野アップサイクル・フード」。こちらの商品が生まれた背景には、食品業界から食品ロスをなくそうという、当社の強い思いがあります。一方で、この商品を作るには、たった一社の努力ではどうにもならなかったことも事実です。
未利用の原料の情報はどこにもなく、どのような商品ができるのか、何ひとつ想像できないところから取り組みを始めました。まず、長野市を通じて協力いただける事業者を募り、行政と民間の垣根を越えた協働の末、およそ1年で商品化に漕ぎつけました。
2023年2月の発売に至るまでにどのような道をたどってきたのか。改めて、そのストーリーをお伝えします。
持続可能な未来への一歩を共に、本社がある長野市との連携
長野アップサイクル・フード事業は、長野市の産学官⾦の連携組織「NAGANOスマートシティコミッション」の立ち上げがきっかけでした。長野市は、2001年以降に県外への転出者数が県内への転入者数を上回る人口減少の状況に直面していました。この人口減少を食い止めるため、長野市は国土交通省が提唱する「スマートシティ構想」(※)を掲げ、令和3年から取り組むことを決めました。
一方、私たちの会社は、当時から食品原料の売買プラットフォーム「シェアシマ」を運営していましたが、未利用の原料を活用した商品化にまで至っていませんでした。アップサイクル事業のアイデアは創業当初からありましたが、資金が限られているスタートアップ企業としては、開発に一定のコストがかかるアップサイクル事業に踏み切るのは困難でした。
しかし、先に述べた「スマートシティ構想」に基づき、長野市が新たな産業の支援体制を整える姿勢を示してくれたおかげで、食品ロスに取り組む私たちの事業にも声が掛かりました。そうして「スマートシティ構想」の推進組織である「NAGANOスマートシティコミッション」が設立されました。これが、長野アップサイクル・フード事業が具体化するに至った経緯です。
※IoTやAIなどの最新技術を活用して環境問題や人口減少などの課題を解決する取り組み
未利用の食材から生まれた「ふくふくレバー」
プロジェクト発足後、私たちは長野市内の食品企業を対象に、未利用の食品原料に関する実態調査を行いました。しかし最初は、各社が口をそろえて「余剰原料はありません」と答えるため、その実態がなかなか明らかとなりませんでした。元食品メーカーの経験からすると、各社で余剰原料が存在することは知っていました。なぜなら、日本の食品メーカーのほとんどは中小企業であり、自社内ですべてを処理するエコシステムを構築するのは困難だからです。しかし、「余っている=悪いこと」という固定観念があり、企業がそれを明るみに出したがらないのです。
私たちは、野菜の残渣や食肉など、さまざまな食品ロスについて調査を進めました。そんなある日、食肉加工工場で「鶏のレバーとハツが余っている」という声を耳にしました。レバーやハツは焼き鳥屋やスーパーでも見かける一般的な食材ですが、他の部位と比べて消費量と供給量のバランスが合わないようです。そこで養鶏場に調査を行ったことが、「ふくふくレバー」商品企画のきっかけです。
食べ物を無駄にしない未来へ。アップサイクル・フードが導く日本の食品ロス削減
「ふくふくレバー」は2023年2月に商品化され、長野・東京の2ヶ所で記者発表会を行いました。あの記者発表会の場で、メディア関係者を介して一般消費者の皆様にお披露目できたこと。それが、今まで大変だった出来事をきれいに浄化してくれた気がします。それから「ふくふくレバー」は徐々に販路を拡大し、長野県のほかにも、東京都内の複数箇所での販売が決定しました。
しかし、まだまだ道半ばです。私たちが本当に目指したい世界は、食品ロスがない社会の実現です。そのためにも、まずはシェアシマが中心となって、食品業界全体で良い循環を生み出せるセカンダリーマーケットを構築していきます。
MEMBER’S VOICE
ICS-net株式会社
代表取締役
小池 祥悟
2017年の創業から、丸6年が経過しました。初年度は、前職の取引先を回りながらも、会社を作り運営していくことに奔走。当時は、長野市内の8畳一間のマンションを借りて創業いたしました。
2019年に「シェアシマ」を上市した際には、私含めて社員数は4人。副業・業務委託人材もいない中で、長野県庁で記者発表を行い、日経新聞や地元の新聞に取り上げて頂き、NHK長野でもその様子が放送されました。2020年には世界中がコロナに見舞われ、ここでシェアシマの会員数が一気に増えます。しかし、当時は新しい営業先の開拓に手が回らず、長野県より直接依頼を受けたWEBサイトの運営を、寝る間も惜しんで毎日作業をしておりました。
転機となったのは、2020年のピッチ大会でのグランプリの受賞。ここから、受託事業や食品卸事業を一旦縮小させ、「シェアシマ」をサービスとしてより拡大させるために舵を切りました。あれから3年。社員数も増え、協力者も増え、会員数も3,000人を突破しました。そしていよいよ今期は、マネタイズする瞬間を迎えようとしています。
今はまだまだ小さな「シェアシマ」ですが、近い将来「食品製造業の中心的存在」となれるよう、7期目も引き続き邁進していきます。